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ソフトウェア彗星追尾機能を実装

天体写真コンポジットスクリプト imageSynth.R に、彗星のような移動天体の追尾機能を追加しました。今話題のLovejoy彗星 (C/2014 Q2) の撮影などに効果的です。


Lovejoy彗星 (C/2014 Q2) 2014年12月28日撮影

機能説明

彗星など太陽系の天体は公転運動によって天球面の中を移動します。彗星は1日に数度もの角度を移動することもあります。長時間露光で淡い尾を写すには、単に日周運動を追尾するだけでなく、彗星の移動も追尾する必要があります。

imageSynth.R は、複数フレームのデジタル天体写真を加算平均して画像のS/Nを向上させるスクリプトです。追尾誤差を計測して、画像ごとにずれた星像の位置を合わせてから平均化します。このスクリプトにオプションを追加して、彗星の移動も補正できるようにしました。

彗星は淡いので、移動量を自動的に測定して補正する機能はありません。移動量はマニュアルで測る必要があります。

使い方

  • インストール

ダウンロードとインストールの方法は従来と同じです。imageSynth.R からスクリプトをダウンロードしてください。詳細は d:id:kamenoseiji:20140609 をご覧下さい。

  • 天体の移動量計測

複数フレーム撮影した写真の最初と最後の2枚を比較して、移動量を測ります。それには、-Cオプションを使います。


DSCF5777.png


DSCF5986.png

この2枚のフレーム DSCF5777.png と DSCF5986.png とを比較するためのコマンド

Rscript imageSynth.R -C DSCF5777.png DSCF5986.png

を実行すると、DSCF5777.png_synth.png という名前の画像ファイルができます。これは2枚のフレームを恒星を基準に重ね合わせたものです。順序が判別できるように最初のフレームが青、最後のフレームが赤になるよう色付けされます。

-Cオプションの出力

この画像を使って移動量を測ります。Macならダブルクリックしてpreviewで開き、領域選択で青と赤で表わされた彗星の位置を対角にすると、移動量がピクセル単位で表示されます。青→赤への移動が、この図だと左方向に48ピクセル、上方向に39ピクセルということが分かります。

previewの領域選択で移動量を計測

この移動量を、次のコンポジット処理で使います。なお、X軸は右方向がプラス、Y軸は上方向がプラスという符号にしていますので、この場合だとXが-48ピクセル、Yが+39ピクセルの移動です。

  • コンポジット処理

Rscript imageSynth.R -X-48 -Y39 *.png

とコマンドを打つと、ディレクトリにある全ての .png ファイルを加算平均して、DSCF5777.png_synth.png というファイル名で出力します。加算平均の際には、恒星を使った位置合わせと、指定した彗星の移動を補正します。-XオプションでX方向の移動量を、-YオプションでY方向の移動量を指定します。オプションと移動量は続けて(空白を入れずに)入力してください。

彗星の移動を追尾して210フレーム(各15秒露光)を加算平均した結果が、冒頭のLovejoy彗星の写真です。彗星を追尾しているので、恒星が直線的に流れた像になります。

なお、オプションを付けなければ従来通りに恒星で位置を合わせて加算平均します。

制約

  1. 彗星の移動は等速直線運動で近似しています。
  2. 加算平均する複数のフレームは、一定間隔で撮影されている必要があります。Exif情報で得られる撮影時刻は使っていません。
  3. コマンドで与える複数の画像ファイル名は、撮影した順番に与えて下さい。デジカメが自動的に付けるファイル名を使えばワイルドカードで自動的に撮影順になるはずです。

よろしければお使い下さい。