Kameno external storage

由無し事をたまに綴るブログです。

観測プロポーザルは早く申し込んだ方が通りやすいのか?

観測プロポーザルの採択率は申し込み順と関連するのか、ALMA Cycle 5のプロポーザル1730件の統計をとって調べてみました。有意性は弱いものの、早い申し込みの方が採択率が高いことが分かりました。


ALMAは毎年4月に観測の提案(プロポーザル)を受付けており、2018年4月19日〆切の第6期 (Cycle 6) には1880件を越える申請が集まりました。プロポーザルは技術審査を経たのちに、科学審査の採点に基づいてGrade A, B, C, Uにランク付けされます。Grade Aが最高ランクで高い優先順位で観測時間が割り当てられ、仮に実行できなかったとしても翌年に持ち越され (carry over) ます。Bはその次の優先順位ですがcarry overはされません。Cはfillerと言って望遠鏡時間に空きができたら実行されます。Uは却下です。現在進行中のCycle 5ですと申請件数1730件のうちGrade Aが7.6%(件数ベース)と狭き門で、Bが17.4%, Cが17.3%, Uが52.9%でした。

研究者にとって望遠鏡時間を得られるかどうかは死活問題ですので、プロポーザルが採択されるように誰もがしのぎを削って良いプロポーザルを書こうとします。〆切時間の間際まで推敲を重ねる人もいれば、余裕をもって準備し早めに申し込みを済ませる人もいます。どちらが採択されやすいのか気になったので、調べてみました。

プロポーザルには申し込み順に受付番号が付きますので、各Gradeごとの受付番号を累積度数にしてプロットします。

もし採択率が受付番号によらず一定なら、どのGradeも累積度数は同一で一定の勾配(対角線:図の破線)を示すはずです。実際には、Grade A, B, Cは対角線より上側にあり、申請が早いほど採択率が高いことがわかりました。一方、不採択のgrade Uは対角線より下側をたどることから、遅いほど不採択が多いことがわかります。

統計的に有意かどうかを調べるには、Kolmogorov-Smirnov検定によって一様分布(対角線)との「距離」を測り、「同一である」という帰無仮説に対するP値を求めて調べます。それぞれのgradeの、一様分布からの距離とP値は以下の通りでした。

grade 距離 P値
A 0.059 0.757
B 0.052 0.386
C 0.062 0.204
U 0.042 0.074

P値で見ると有意と言えるのはgrade Uと一様分布との距離だけで、それも7.4%ですから有意性は弱いです。ただ、grade Bの前半だけをとってみるとP値は3%なので、grade Bは早い申請が多いことがわかりました。面白いのはgrade BとCとの間にも有意な (P値=4%)差があったことで、累積度数を見るとgrade Bがgrade Cより早いところに集まっていることを示しています。
grade Aについてはサンプルサイズが小さいため、特に有意な違いは見られませんでした。

この統計だけでは因果関係についてはわかりません。早いうちから準備しているから良いプロポーザルになるのか、それとも審査委員の心証が影響するのか、いろいろ要因は考えられますが、深くは追究しないことにします。

プロポーザルは余裕をもって準備しましょう。