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由無し事をたまに綴るブログです。

皆既日蝕2020年12月14日観望記

2020年12月14日の皆既日蝕を観るために、Villarrica (ビジャリカ) に行った行程の記録です。COVID-19禍にあって旅行は容易ではなく、天気も不調で皆既日蝕は観れませんでしたが、部分日蝕は観ることができました。昨年の皆既日蝕の写真・動画を見たい方はこちらの記事をごらん下さい。

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Villarricaでの部分日蝕(皆既日蝕1時間後)

 

チリは南北に長いので、皆既日蝕帯が通過する確率が高いです。2019年7月2日のLa Serenaに続いてわずか1年半後の2020年12月14日に皆既日蝕が起こります。なお、2021年12月4日に南極大陸で起こる皆既日蝕は、チリが領有権を主張している領域を通るので、これを含めるとチリはアルゼンチンと並んで3年連続皆既日蝕が起こる国ということになります。

今回(2020年12月14日)の日蝕帯はチリからアルゼンチンの中南部にかかかり、Temuco, Villarrica, Pucónなどの街が含まれます。私はVillarrica湖畔にあって比較的アクセスが容易なVillarricaで日蝕を観る計画を立てました。

 

交通アクセス

観光地のVillarricaやPucónにおけるホテルは、日蝕の1年前から当日の予約がかなり埋まっていました。また、予約していても直前に宿がキャンセルして値段を釣り上げるようなことが2019年のLa Serenaで起こっていたので、宿泊無しで日蝕を観ることにしました。Santiagoからは、Villarrica・Pucónへ直行する夜行バスが運行されており、当日の朝に到着して夕方の便でSantiagoに戻れば、宿に泊まることなく日蝕を観察できます。

夜行バスを運行するTurbusでは、前々月からバスの予約を受付けているようでしたので、10月になるまで様子を見ていました。しかし2020年3月からチリでも新型コロナウィルス感染が蔓延し、国境封鎖と外出禁止令が出されて計画が一変します。TurbusもVillarrica路線の運行を停止し、10月になっても予約できない状態になってしまいました。コロナ禍で夜行バスに7時間乗るのは感染リスク要因ですので、皆既日蝕はあきらめてSantiagoで食分79%の部分日蝕で我慢しようという気になっていました。

LATAM

9月末から11月上旬まで日本出張する際に航空便を検索していて、LATAM航空によるチリ国内線は普通に運航していることを知り、Temuco近郊のAraucanía空港 (ZCO) への行けば皆既日蝕帯に行けることに気付きます。早速LATAM航空でSCO - ZCOの日帰り便を予約しました。ZCO到着が12h16mで皆既日蝕の開始46分前と言うギリギリのスケジュールですが、日帰り皆既日蝕観察はLa Serenaでも経験があるので、何とか間に合うでしょう。

ところが、11月17日になってLATAM航空から、往路便のスケジュールがZCO着14h01mに変更された、との通知が来ました。これでは皆既日蝕に間に合いません。やむなくLATAMの航空券をキャンセルしました。

Turbus

一方で、TurbusによるVillarrica行きバスの運行が再開され、12月13日発14日着の便に空席があることに気付きました。残念ながら近所のVitacuraから乗ることができず、Santiago中心部のAlamedaバスターミナルからの乗車のみで面倒かつ高リスクなのですが、それでもVillarricaに行けるのであれば、と予約しました。この時期にはSantiagoの感染状況は少し落ち着いていて、外出禁止令は夜間(0:00 - 5:00) に限られ、平日・休日ともに外出してもOKでしたので、Alamedaバスターミナルまで地下鉄で行くのは問題ありません。

しかし日蝕直前の12月3日になって状況は再度変わります。まず、12月10日からSantiago全域がPhase 3から2へと後退。休日は外出禁止となります。バスに乗るために12月13日(日曜)にAlamedaまで行くことができません。また、日蝕で人が密集するのを避けるためか、14日(月)9時から14時までVillarrica湖畔道路は閉鎖措置となりました。やむなくTurbusの予約をキャンセルしました。

JAC

何とかVillarricaに行く方法がないか調べていると、JACというバス会社がVillarrica行きの夜行バスを運行しており、しかも1便はParque Araucano発着とあります。自宅から歩いて2分の場所です。7年間Santiagoに住んでいて、こんな近所にVillarrica行きのバス停があったとは気付きませんでした。渡りに舟と予約サイトを見ると、十分に空席があります。早速12月13日22h10m発 - 翌14日7h10m着の往路と、14日21h25m発 - 15日7h00m着の復路を予約しました。

撮影地

バスの予約をしたら撮影地の確保です。Villarricaは湖畔の観光地ということで、湖岸に公園や展望地が多数あり、バスターミナルからも歩いていける距離にあります。ビーチに面したLife Caféという場所が開けていて良さそうなので、この場所で撮影することにします。通常なら日蝕ハンターが大勢押し寄せることでしょうが、国境閉鎖中なので昨年のLa Serenaのような混雑にはならないでしょう。

当日の記録

搭乗の直前に、オンラインで移動許可証 (Pasaporte Sanitario) を取得しておきます。この許可証はバス搭乗の際にチェックされます。

バス予約の他の準備としては、日蝕撮影用の小型望遠鏡とカメラ, 記録用のビデオカメラ, 日蝕グラス, 防水用のポリ袋とザックカバー, 傘, 水と飲料と食料品です。天気予報が雨だったので傘とレインウェアは欠かせません。また、現地でレストランが営業しているかも不明だったので食料品と飲料も持っていきます。

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JACのSalon Cama席。フルフラットになります。

JACのバスでは、Salon Camaというフルフラットになる席を予約しました。お値段高めですが、国際線飛行機のビジネスクラス並に広くて快適な席です。ただし機内食もアメニティも毛布もありませんので自分で用意が必要です。感染対策のため通路との間に透明なカーテンが設けられ、また換気のファンがフル稼働していました。騒音はノイズキャンセリングヘッドホンを使えば問題ありません。十分に熟睡できました。

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小雨の降り続くVillarricaバスターミナル

目が覚めるとTemucoに途中停車。ここで小雨が降っていて天気予報の通りです。そこから1時間弱でVillarricaに到着。やはり小雨です。止むまでバスターミナルで雨宿りしているつもりだったのですが、11時頃に係員から追い出され、傘をさして湖畔のLife Caféに向かいます。人通りはやや多いですが十分許容範囲の混雑度。湖岸道路は自動車は通行止めですが歩行者は問題なく通れます。

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Villarrica湖岸道路。皆既日蝕まであと1時間。

Life Caféのある展望地で1時間ほど雨宿りしていましたが、部分日蝕も始まっていることですし、一応望遠鏡をセットします。小雨は降り続きますが、時折雲間から欠けた太陽が姿を現し、そのたびに歓声が上がります。皆既日蝕2分前に細くなった太陽が一瞬見えたのですが、望遠鏡を向ける間もなく厚い雲に遮られてしまいました。


Total Eclipse in Rain (at Villarrica, Chile), 2020-12-14

皆既の直前から周囲が夜のように暗くなり、スマホでその様子を撮る人が多数。残念ながら皆既日蝕中に晴れることはなく、コロナもダイアモンドリングも見ることができませんでした。


Total solar eclipse in Villarrica, 2020-12-14, an hour later since totality

皆既終了から1時間近く経ってようやく晴れ間が出てきて、部分日蝕を撮影することができました。部分日蝕が終わる頃にはすっかり青空が広がり、風光明媚なVillarrica湖畔の光景が広がります。

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皆既日蝕後に晴れたVillarrica湖畔

復路のバス出発まで十分に時間があるので、Villarrica湖畔を散策して景色を楽しみました。湖水はあまり冷たくなく、チリの海水より暖かいくらいで、泳いでいる人もいました。


Lago Villarrica after Eclipse

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斯くして今回の皆既日蝕観察は残念な結果に終わりました。得られたのは部分日蝕の様子とVillarricaの景色、それに自宅の近所から夜行バスで観光地に行くという経験です。Villarricaは日蝕が無くても訪れる価値のある場所で、また行ってもいいと思えます。夜行バスもフルフラットになるなら楽々でした。