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由無し事をたまに綴るブログです。

リーダーと管理監督者の決定的な違い

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オフィス壁面にホワイトボードシートのプレゼント

2つの指揮系統で、リーダーと管理監督者との対比が鮮明になる出来事がありました。

私の勤務先である合同アルマ観測所 (Joint ALMA Observatory : JAO) は、日米欧が分担する予算で運営される国際組織で、職務の命令指揮系統はJAO所長の元、部門 (Department) - 部署 (Group) という構成になっています。例えば私はDSO (Department of Science Operation) 部門, APG (Array Performance Group) 部署に所属しています。
一方でJAO国際職員は日本国立天文台NAOJ), 米国国立電波天文台(NRAO), 欧州南天文台 (ESO) のいずれかの機関に所属し、機関に雇用されている形態になります。例えば私はNAOJのアルマプロジェクトに所属しており、NAOJの上位組織である自然科学研究機構 (NINS) から雇用されて給与もNINSから受取ります。
このように命令指揮系統と雇用形態が分かれているのは複雑で難儀しますが、一方で2つの指揮系統を比較する稀な機会が得られます。この2系統の対比が鮮明になる出来事がありましたので、紹介させてください。

JAO・APGマネージャによる嬉しい采配

私事で10月後半から11月初旬まで休暇をとった後に久しぶりに出勤すると、オフィスの壁にホワイトボードシートが貼ってあります。以前から自分でホワイトボードシートを使っていたのですが、その面積が倍になって新しく、皺もかなり解消されて使いやすくなっています。頼んでもいないのに一体誰がこんなことを、サンタクロースが11月にやってきたのかしら……と不思議に思っていたのですが、APGマネージャがプレゼントしてくれたことが判明しました。何と嬉しいサプライズ。こんなことされたら、やる気が出るにきまっているじゃないですか。広くて使いやすくなったホワイトボードの効用もさることながら、APGメンバーにとって生産性を向上するのに何が必要か考えている姿勢に感銘を受けました。思えば1年前に転出した前APGマネージャも新しいリダクションサーバを用意するなど、常にグループの生産性とやる気を引き出すよう行動していました。リーダーシップを理解しているマネージャに恵まれて良かったです。

自然科学機構事務局による在宅勤務経費負担の説明

一方で、私はチリ地区の過半数代表者としてNINSとの労使協定締結や規程に対する意見書を出す立場にあります。コロナ禍で在宅勤務を強いられる中、NINSは在宅勤務制度に係る規程にて2021年3月に、「水道光熱費、情報通信機器を利用することに伴う通信費その他の経費は、在宅勤務者の負担とする」と定めました。
これに対して労働者側から「国税庁が示す在宅勤務にかかる費用負担の基準に基づき業務使用分を使用者が負担することを提案します」と申し入れました。
しかしNINSは「在宅勤務に係るコストの負担保障については、国及び他の国立大学等の動向を注視しながら、今後、検討していくこととします」と回答するにとどまりました。
その後8ヶ月経過しても本件について音沙汰が無かったので、過半数代表者として機構事務局に「その後検討は進みましたか?何を検討したのかお知らせください」と問い合わせたところ、文書にて回答がありました。曰く、「本件については、機構において現在、検討を進めているところですが、令和3年人事院勧告で、テレワーク(在宅勤務)に関する給与面での対応として、『公務におけるテレワークの実態や経費負担の状況と把握、既に在宅勤務手当を導入した企業に対するヒアリングの実施などを通じ、引き続き研究』することが記されていることから、その動向に注視しているところです」とのことです。
機構事務局の優秀な方々は、その才能を保身に全振りし、研究者を落胆させ意欲を削ぐ方向に使う立場に置かれているのだなと、報告書を一読して残念な感情を抱かずにはいられません。
それでもきっと研究者の生産性を向上させる方向に何らかの方策を練っているのでは、と一縷の期待をもってzoom会議で説明してもらう機会を頂きました。しかしそこでは具体的な検討内容は一切示されず「引き続き検討している」という回答だけ。判明したのは、自然科学研究機構はチリの外出禁止令の状況など把握しておらず、在宅勤務の対処は機構でなく国立天文台の役割であるから国立天文台長に話を持っていってくれ、というたらい回しの姿勢でした。

リーダーと管理監督者の違いを生むもの

2つの指揮系統を比較することで、メンバーのやる気を引き出すリーダーシップと、やる気を削ぐ管理監督者との決定的な違いが浮き彫りになりました。別な視点からこの違いを捉えるなら、目線をどこに置くかの違いとも言えるでしょう。片やメンバーのやる気を引き出して組織としての生産性を向上させ、科学コミュニティに貢献しようという目線。片や人事院や他の国立大学より前に出ることなく、監督官庁である文部科学省や人事権を握る内閣府から物言いをされないよう保身に努める姿勢。
人の生き方はそれぞれで他人がとやかく言うつもりはありません。とても対照的な仕事の仕方を目の当たりにし、考えさせられる機会を得たことに感謝いたします。