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由無し事をたまに綴るブログです。

国立大学無償化に向けた現実策

現在、国立大学の授業料は年間約54万円。私立大学に比べれば安いとはいえ、4年間で約240万円の負担(入学料もあるので)は重いでしょう。国立大学の運営には授業料収入以上に運営交付金や科学研究費補助金など国の予算(つまり税金)が使われており、学生一人が4年で卒業するのにかかる経費は約550万円(国立大学法人K大学の場合)です。
先日、「『大学無償化』国連人権規約を協議へ」朝日新聞2012年3月17日)という記事を見ました。記事の冒頭を引用すると、

外務省は、大学や高専など高等教育の段階的無償化を求めた国際人権規約の条項について、30年余り続けてきた留保を撤回する方針を固めた。文部科学省などと協議して手続きを進める。授業料の減額や返還不要の奨学金の導入など、条項に沿った施策に努めることを国際社会に示す意味合いがある。ただ、現状で具体策は示されていない。

ということです。日本は1979年に条約を批准したものの、「高等教育は、無償教育の漸進的な導入ですべての者に均等に機会が与えられるものとすること」という条項は留保してきたとのこと。これが無償化に向けて前進するなら、学生が学ぶ経済的な環境が大きく改善されるので望ましいことです。
大学無償化に対して、以下のような反対意見が予想されます。

  1. 少子化により大学全入となり、大学生の学力が低下しているのに、甘やかしてどうする。
  2. 財政赤字が深刻なのに、財政支出を増やすべきでない。
  3. 国立大学に入学した人だけが利益を享受できて不公平。

これらの批判に応える方策を考えてみました。その案とは、
無償化した国立大学を卒業した人は、卒業後の所得税率をx%だけ上乗せする。例えばxは無償で国立大学に在籍した年数(標準的には4)とする。
というものです。
この方法であれば、在学中は負担はありませんから優秀で学ぶ意欲があるにも関わらず経済的に恵まれない学生を支援できます。大学生の学力低下を食い止める一助となるでしょう。
卒業後に働いて得た収入から4%程度を返すことは無理な負担ではないでしょう。卒業後に無収入あるいは課税最低限以下の低収入の人は所得税負担は0(控除後)ですから、苦しさが増すわけではありません。
生涯収入(控除後)を2億円とすると、その4%は800万円ですから、大学が学生一人に要する経費550万円を上回ります。つまり「国立大学経営」という事業は国として長期的に黒字となるので、国庫を傷めません。
所得税率の上乗せxの設計をどうするかとか、国立大学の定員は減らさなくて良いのかとか、卒業後に外国で働く人はどうするかとか、私立大学はどうするかなど、より深く考えるべき点は多々ありますが、試案として無償化と所得税率上乗せをペアにするって、いかがでしょうか?

追記2016.2.4:マイナンバー導入により、所得税率上乗せのために国立大学卒業を追跡することも、やろうと思えばできるようになりました。