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由無し事をたまに綴るブログです。

水星は南半球で見つけやすい


東方最大離角間近の水星を見ることができました。明るい金星や土星が目印になるので見つけやすいです。コペルニクスは生涯水星を見ることがなかったと言われているので、こんなに簡単に見つけられて申し訳ないくらいです。日本に住んでいたときに水星を見るのは難しかったですが、南半球に移り住んで「あれ、水星ってこんなに見つけやすかったっけ?」と思ってから、水星は南半球で見やすい軌道条件にあることに気付きました。その条件とは、

  1. 水星は太陽の近くを回っている
  2. 水星の軌道は離心率が0.21と大きい楕円軌道
  3. 水星の遠日点は南半球側

というものです。

1. 水星は太陽の近くを回っている

太陽系の惑星で一番内側を公転する水星は、地球から見て最大でも太陽から28°しか離れません。日の入り直後か、日の出直前だけが、見ることのできるチャンスです。薄明の中で水星を見るには、なるべく太陽からの離角が大きく、地平線からの高度が高い条件が必要です。

2. 水星の軌道は離心率が0.21と大きい楕円軌道

水星は太陽系の惑星の中で最も離心率が大きい、つまり細長い楕円軌道を公転しています。近日点距離0.31 AUに対して、遠日点距離0.47 AUと、1.53倍も違います。水星が遠日点付近にあるときに、太陽-水星を結ぶ線分を真横から見る位置に地球がいれば、太陽から最も離角が大きく(28°)見やすい条件になります。逆に近日点付近にある場合の最大離角は19°程度にしかなりません。

3. 水星の遠日点は南半球側

水星の遠日点は日心位置で黄経306°, 黄緯-7°(赤経20h40m48s, 赤緯-25°34'18") の方向、つまり南半球にあります。遠日点付近にある水星を見るには、南半球が有利なわけです。水星が遠日点付近にあるときに東方最大離角(夕方に見える)になるのは10月上旬、西方最大離角(明け方に見える)になるのは4月上旬です。南半球のサンティアゴでは、この条件はどちらも水星の軌道が地平線に対して垂直に近い角度をなすので、高い高度で水星を見つけられるのです。逆に北半球ではこの条件はどちらも水星の軌道が地平線に対して浅い角度になるため、水星の高度は低くて見つけにくいです。


[10月6日の地球・金星・水星・太陽の位置関係。水星が遠日点近くにあり、地球から見て離角が大きい位置にあります。]

今回(2013年10月9日)の東方最大離角は水星が遠日点に近く、25°20'と比較的大きい離角です。南半球からは写真のように高い高度で見ることができます。しかし北半球の東京では、つるちゃんのプラネタリウムによると、日没後30分の高度がわずか4.2°と低く見づらいようです。

このように、太陽系天体の見やすさは軌道条件と地理条件によって変わります。水星はたまたま南半球で見やすく北半球で見づらい軌道でした。一方、11月29日に近日点を通過し大彗星になると予想されているISON彗星は、遠日点が北半球側にあるので北半球で見やすい彗星です。近日点通過後はどんどん北上するので、南半球からは見づらくなります。この点は北半球の人たちが羨ましいです。