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由無し事をたまに綴るブログです。

ポラリエで楽々観望と天体写真撮影

Vixenのポラリエを入手し、使ってみました。ポラリエは地球の自転に合わせて天体を追尾してくれる赤道儀です。望遠鏡の視野に導入した天体が日周運動で逃げないので、観望が楽になります。また、天体写真を長時間露光しても流れずに星が点に写ってくれます。

購入セット

上記の他に、片持ちフォーク赤道儀とBORG 60ED鏡筒はすでに所有していました。片持ちフォーク赤道儀は微動減速は付いているものの追尾機能はないので、ポラリエと組み合わせると使いやすい赤道儀になります。
三脚はシンプルで頑丈なものにしました。クイックシューと自由雲台を外せば、カメラネジが鉛直方向に付くだけのものになります。これにアングルプレート35VPを付けると、緯度-33°のサンティアゴでちょうどポラリエの極軸を仰角35°に向けられます(2°の差は三脚で調整する)。

設置

自宅で試してみました。写真のように室内に設置して使うと、小さい子でも安全に天体観望を楽しめます。ポラリエは単三電池2本またはUSBから給電してモーターを駆動します。iPadのACアダプター+USBケーブルで問題なく動きます。なお、ポラリエは北半球・南半球の切換スイッチがあるので、南半球でも追尾します。

極軸合わせ

ポラリエにはオプションで極軸望遠鏡もあるのですが、天の南極付近には北極星のような目立つ星が少ないので購入しませんでした。自宅は北向きなので天の南極は見えないですしね。極軸の仰角はポラリエの水準器でだいたい合わせられます。ある程度めのこで合わせても、観望や短時間露光の天体写真なら問題ありません。長時間露光に耐える精度で極軸を合わせるには、極軸望遠鏡がなくても、図1に示すように、以下の要領で精度よく極軸合わせができます。

以下は南半球での合わせ方です。

  1. 天の赤道付近にあり、北中している天体を追尾:極軸が東側にずれいていると、天体が北にずれていくので、「北にずれていく→極軸を西側に向ける」、「南にずれていく→極軸を東側に向ける」という補正をします。
  2. 天の赤道付近にあり、東から昇ってきたばかりの天体を追尾:極軸が下側にずれいていると、天体が北にずれていくので、「北にずれていく→極軸を上側に向ける」、「南にずれていく→極軸を下側に向ける」という補正をします。

追尾している天体が赤緯方向に流れている速さと極軸のずれ補正とは、1秒角/secなら極軸を3.8°ずらす、という比例関係で表わせます。追尾している天体が天の赤道からδずれている(天体の赤緯がδ)場合は、3.8° / cosδが補正係数です。


図1: クリックすると拡大

北半球では逆センスになります。すなわち、

  1. 天の赤道付近にあり、南中している天体を追尾:極軸が東側にずれいていると、天体が南にずれていくので、「南にずれていく→極軸を西側に向ける」、「北にずれていく→極軸を東側に向ける」という補正をします。
  2. 天の赤道付近にあり、東から昇ってきたばかりの天体を追尾:極軸が下側にずれいていると、天体が南にずれていくので、「南にずれていく→極軸を上側に向ける」、「北にずれていく→極軸を下側に向ける」という補正をします。

補正係数は符号が変わるだけで、大きさは南半球の場合と同じです。

このような方法で、極軸望遠鏡がなくても極軸を十分な精度で合わせられます。冒頭の写真M 46・M 47の写真はBORG 60ED (f = 350 mm) を使って10秒露光で直焦点撮影したものです。M 46を拡大してもほとんど流れていません。

最近のデジタルカメラは高感度で、10秒程度の露光でも淡い星雲などもよく写ります。ポラリエは期待以上に高精度に追尾してくれるので、直焦点撮影や望遠レンズによる撮影にも堪えることが分かりました。もちろん望遠鏡を使わずに標準レンズや広角レンズで星野写真を撮るのにも威力を発揮します。重い機材を運ばなくても気軽に星雲・星団の撮影を可能にした、素晴らしい製品でした。