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由無し事をたまに綴るブログです。

小学生の通学に登山用リュック

この記事は、「ランドセルを買ってほしい」とねだる娘に、成長した後に読んでもらうために書いたものです。

小学1年生の娘が通学に使っているのは、登山用品店で自分で選んだdeuterのリュックサック「Madchen 20」です。父親である私は、通学にはランドセルよりリュックサックが優れていると考えているので、娘の選択を支持します。ところがいざ入学してみるとクラスメイトのほとんどがランドセルを使っているためか、娘が「ランドセル買って」と言うようになりました。娘がランドセルを欲しがる意図が、「お友達と一緒じゃないとイヤ」という一時的なものなのか、それともランドセルの方が優れていると考えているのか見極めたいので、「2年生になったときにまだランドセルが欲しいなら考えてやってもいい」と伝えました。


ランドセルに対して登山用リュックサックが優れている点は、楽に背負えるよう工夫された設計にあります。

1. 軽い
最近のランドセルは昔に比べて軽くなったとはいえ1 - 2 kgはあり、570 gのMadchen 20に比べて重いです。さらに、ランドセルはモーメントが大きいので背負って重く感じます。標準的なランドセルは厚さが20 cmほどあり、圧縮機構がありません。教科書・ノートなどが5 kgあるとすると、質量は6.5 kg, 背にかかる力のモーメントは6.5 Nmほどになります。一方Madchen 20なら圧縮ストラップがあるので厚みは最小化でき、5 kgの教科書・ノートでも10 cm程度の厚さに圧縮して、力のモーメントを2.8 Nmと半分にできます。体躯が未熟な小学生には、力のモーメントが小さい方がいいです。

2. 体にフィットするしくみ
ランドセルは肩に全荷重がかかります。一方Madchen 20にはウェストベルトがあるので、腰と肩に荷重を分散できます。また、チェストストラップがあるのでリュックサックが体にフィットし、横ずれを防止します。

3. 収容力
ランドセルの容量は、A4ファイル対応を謳うものでも8ℓ程度しかありません。教科書・ノートの他に体操着と弁当を入れるのは無理があり、弁当は別に手提げ袋が必要になります。片手がふさがるのは安全上好ましくありません。娘が選んだMadchen 20は20ℓの容量があり、しかもサイドポケットや背面ポケットがありますから、弁当や水筒も余裕で入りますし、A4のファイルも入ります。

4. 蒸れ防止
革製のランドセルはほとんど透湿性がなく、暑いと背中が蒸れます。一方Madchen 20は背中がメッシュで通気性があり、蒸れを防ぎます。

登山用リュックサックの方が機能的に優れているにもかかわらず、新入生のほとんどがランドセルを使うのはなぜでしょう。
学校が指定する場合は措いたとして、「小学生の通学はランドセル」という固定観念ができあがっているから、ではないでしょうか。

サンケイリビング新聞社の調査によると、ランドセル購入者の約7割が祖父母だそうです。ランドセル業界も当然、使用する小学生でなく、購入する祖父母を意識したマーケティングをするでしょう。使いやすさより、「孫に何かしてやりたい」という祖父母の気持ちを満たす商品が選ばれる市場です。

一方、登山用リュックサックは使う人の厳しい選択眼にさらされます。山では体にフィットしなかったり負担が大きかったりすると疲労やケガ・事故の元になりますから、ダメな製品は淘汰されます。

機能・使いやすさで今も進化を続ける登山用リュックサック市場と、祖父母の見栄に阿るランドセル市場とでは、目指す方向性が違うのでしょう。この違いを敏感に感じるのは通学に使う小学生本人です。この記事によると、1年生で100%だったランドセル使用率も学年が上がるほど減少し、4年生で29%, 6年生で12%にまで低下します。ランドセル市場の謳い文句に「ランドセルは6年間使うもの」というのがありますが、現実には6年間使う小学生は希少なのです。
単純に通学用として比べると、ランドセルより登山用リュックサックを選ぶのが合理的です。

もちろん使うものを選ぶ際に、合理性だけでなく感性で「お気に入り」を選ぶことを否定はしません。
だけど、「他のみんながランドセルだから」という同調圧力で、自分で選んだMadchen 20を簡単に捨てないでほしいのです。他人は他人、自分は自分。他の子がランドセルを使おうと使うまいと、自分が一番に選んだものを堂々と使ってください。