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由無し事をたまに綴るブログです。

星景写真に適した広角レンズ SAMYANG 12mm F2.0 NCS CS

画角98°.0の広角レンズ SAMYANG 12mm F2.0 NCS CS *1を、主に天体写真用にFujifilm X-M1の交換レンズとして2016年1月に購入し、3ヶ月ほど使用しました。優れた性能にもかかわらず37,800円(チャンプカメラにて)という手頃な価格で、満足しています。画角が広いので星空を地上の風景に合わせ込む星景写真写真に適しています。天の川を撮影すると、ケンタウルス座からたて座までの範囲が写ります。

天体写真に求められる要件は、収差が少なく星像が点に近いこと、歪曲が小さく星座の形がなるべく歪まないこと、輝度の低い星雲も写せるように明るい(F値が小さい)こと、レンズフレア・ゴーストの影響が小さくコントラストを低下させないこと、などがあります。これらの要件は互いにトレードオフにもなり、全てを満たす理想的な光学系は困難です。例えば開口を絞れば収差を小さくできますがF値は大きくなって暗くなります。レンズの枚数を増やすと収差や歪曲を抑制できますがレンズフレアが発生しやすくなります。
SAMYANG 12mmは、これらの要件をバランスよく満たしています。冒頭の写真はF2.0の開放で撮ったものですが、歪曲はほとんど気になりません。


写野中央を拡大して星像を確認してみましょう。微光星が緑や紫などの偽色になっていることがわかります。これはローパスフィルターを使わないX-M1で点像を撮影するときの宿命で、星像がカラーフィルターの配列パターンより小さいために起こる現象です。つまり、偽色が発生しているということは星像がシャープであることの証左です*2


写野の隅を拡大してみましょう。さすがにコマ収差や非点収差によって星像が歪んでいますが、それでも偽色が発生していることから十分にシャープな星像が得られていると言えましょう。
ちなみにAi Nikkor 50mm F1.4を開放で使うとこんな感じF2.0に絞るとこんな感じの星像になります。SAMYANGが短焦点で広い写野をカバーしているにもかかわらず、開放でも隅々まで優れた星像を結ぶことが分かるでしょう。


F2.0の開放で問題なく使えるので、短時間の露光でも淡い対象を捉えられます。ISO3200の条件で30秒露光 x 4フレームで天の川と黄道光を撮ったのが上の写真です。


こちらはALMA OSFサイトでDV02アンテナと南天を通過する「ひとみ衛星」を撮った写真です。OSF Technical Buildingの窓明かりが眩しいですが、特に問題になるようなレンズフレアは見られません。

なお、このレンズにはオートフォーカスの機能はありません。天体写真にはオートフォーカスは邪魔なので、この点も私は気に入っています。フォーカスリングがそこそこ固いので、天頂を撮影していても自重で焦点がずれることもありません。一般の写真にはオートフォーカスがあれば便利かもしれませんが、短焦点で被写体深度も深いですからマニュアルフォーカスでも特に気になりません。参考までに一般の風景写真も載せてみます。アタカマ塩湖の広大な風景を表現できていますでしょうか?

*1: ROKINONのブランド名で販売している場合もありますが、同じ製品のようです。

*2: なお、偽色は現像ソフトウェアでローパスフィルターをかけたり複数フレームをスタック処理することで消せます。冒頭の天の川の写真は15枚をスタック処理して偽色を消しています